公務員のワーホリは休職で行ける?退職のお金と帰国後の戻り方
公務員のままワーホリに行けるのか、休業制度の対象と在職のまま海外に行ける3つの道、辞めて行くときの退職手当・住民税・健康保険と年金の手続き、帰国後に経験者採用や再採用制度で公務員に戻る道まで、判断に必要な条件を整理しました。

「公務員を辞めてまでワーホリに行くのは、もったいないのだろうか」。年齢の上限が近づくなかで、休職して行ける道はないのか、帰国後に公務員へ戻れるのかと考えるほど、安定を手放す不安と周りの目で決めきれなくなるものです。
そこで本記事では、在職のまま海外に行ける制度、辞めて行くときのお金と手続き、帰国後に公務員へ戻る道を順に整理します。気持ちだけでなく、制度の条件と数字で、辞めるか続けるかを落ち着いて比べられるはずです。
同じ流れで、目的と年齢から逆算する判断基準や、辞める前に人事担当へ確かめておきたいこと、よくある疑問への答えもまとめています。
公務員のままワーホリに行くのは難しい
公務員の身分のままワーホリに行くのは、制度の上で難しいのが実情です。休業制度の対象は大学などでの修学や国際貢献活動に限られ、休暇を過ごしながら働くワーホリは、そのままでは当てはまりません。
休業制度の対象にワーホリは当てはまりにくい
国家公務員の自己啓発等休業は、法律で「大学等における修学又は国際貢献活動のための休業」と定められています(国家公務員の自己啓発等休業に関する法律)。一方、外務省はワーホリを、休暇目的の入国と、旅行・滞在の資金を補う付随的な就労を認める制度と説明しています。
つまり、休暇を過ごして働くこと自体は、休業の理由にそのまま当てはまりません。さらに休業は、任命権者が公務に支障がないと認めたときに「承認することができる」仕組みで、申し出れば必ず取れる権利でもない点に注意が必要です。
地方公務員は条例で中身が変わる
地方公務員の自己啓発等休業は、地方公務員法で上限を3年とし、期間や対象になる学校・活動は各自治体の条例で決める仕組みです。自治体によっては、短期大学や専修学校、NPOの国際協力の活動まで対象に含める例もあります。
ただし、国の運用や鳥取県警察の例では、大学などで学ぶための休業について、退職や転職の準備が目的なら対象外とし、復帰後も勤め続ける意思を確かめる書類を求めています。語学学校への通学が対象になるかは自治体の決まりしだいなので、所属先の条例や規則を人事担当に確かめましょう。
休業中に現地で働くには許可が必要
休業中も公務員の身分は残るため、報酬を得て働くには、在職中と同じように許可が必要です。人事院は、自己啓発等休業中の兼業は許可を受ければできるとしつつ、報酬が生活費や学費に必要な範囲を超える場合などは認められないとしています(人事院のQ&A)。
休業は学びや国際協力のための制度で、現地で働きながら暮らすための制度ではありません。ワーホリのように働く時間が中心になる滞在を考えているなら、休業ではなく退職を前提に計画するのが現実的でしょう。最新は公式サイトでご確認ください。
在職のまま海外に行ける3つの道
公務員の身分を残したまま海外に行くなら、大学などで学ぶ自己啓発等休業、JICA海外協力隊への現職参加、配偶者の海外赴任に同行する休業の3つが主な道です。どれもワーホリとは目的が違うので、自分のやりたいことに合うかで選びましょう。
道 | 対象になる活動 | 期間の上限 | 給与 |
|---|---|---|---|
自己啓発等休業 | 大学などでの修学 | 国は2年で一部3年 | なし |
自己啓発等休業 | 協力隊などの国際貢献 | 3年 | なし |
JICAへの派遣 | 海外協力隊の活動 | 派遣の期間 | 派遣の形による |
配偶者同行休業 | 海外で働く配偶者と同居 | 3年 | なし |
大学や大学院で学ぶ自己啓発等休業
海外の大学や大学院の正規の課程に在学するなら、自己啓発等休業を使える可能性があります。国の制度では在職2年以上が条件で、始めたい日の1か月前までに申し出る決まりです。
人事院の運用の目安では、修学の場合、復帰後おおむね5年程度は勤め続ける見込みがあることが求められます。人事院の両立支援制度の利用状況調査(2025年1月公表)では、令和5年度に新たにこの休業をした一般職の国家公務員は34人で、そのうち修学が27人でした。休業中は無給なので、学費と生活費を自分でまかなう計画が欠かせません。
JICA海外協力隊に現職のまま参加する
国際協力に関わりたいなら、JICA海外協力隊に所属先の身分を残したまま参加する「現職参加」という道があります。応募できるのは20〜69歳で、長期の派遣は1〜2年です(JICAの現職参加の案内)。
国家公務員は派遣の制度か自己啓発等休業で、地方公務員は派遣の条例か自己啓発等休業で参加し、どちらも所属先の承認が必要です。派遣の条例を使えば給与を受けながら参加できる自治体もあるので、早めに上司と人事担当に相談しましょう。
配偶者の海外赴任に同行する休業
配偶者が海外で働いたり学んだりする場合は、3年以内で一緒に暮らすための配偶者同行休業があります。配偶者の滞在は6か月以上続く見込みであることが条件で、事実婚の配偶者も対象です。
人事院の同じ種類の調査(2025年11月公表)では、令和6年度に新たにこの休業をした国家公務員は78人でした(人事院の報道発表)。ただし、これは配偶者についていくための制度で、自分がワーホリに行くために使うことはできません。休業中に現地で働く場合も許可が要るため、人事担当への確認は欠かせません。最新は公式サイトでご確認ください。
辞めてワーホリに行くときのお金と手続き
公務員を辞めてワーホリに行くなら、自己都合で減る退職手当、後から届く翌年度の住民税、健康保険と年金の切り替えの3つを出国前に押さえておきましょう。金額や窓口は自治体や共済組合ごとに違うため、早めに確かめておくと慌てずに済みます。
自己都合の退職手当は割合が下がる
国家公務員が自分の都合で辞めると、退職手当の基本額は、勤続年数から計算した額に、勤続10年以下なら100分の60(6割)をかけた額になります(国家公務員退職手当法)。勤続11〜15年なら100分の80、16〜19年なら100分の90です。
たとえば俸給月額(基本の月給)が25万円で勤続5年なら、25万円×5×0.6に当分の間の調整率0.837をかけて、基本額は約63万円が目安になります。自己都合で勤続9年以下の場合は、基本額に足される調整額もありません。
地方公務員の退職手当は各自治体の条例で決まるので、所属先の退職手当条例か人事担当に確かめてください。最新は公式サイトでご確認ください。
退職した翌年度の住民税は後から届く
住民税は前の年の所得にかかる後払いの税金なので、辞めて収入がなくなっても、在職中の所得の分の請求が後から届きます(総務省の個人住民税の案内)。年度末の3月31日に辞める場合、5月分までの残りは原則として最後の給与や退職手当からまとめて差し引かれます。
たとえば2027年3月31日に辞めると、2027年1月1日には日本に住所があるため、2026年の所得にかかる2027年度分の住民税は、6月以降に自分で納める形になるのが一般的です。海外転出の届出をして2028年1月1日に日本に住所がなければ、2028年度分はかかりません。
出国するなら、納税管理人(代わりに納税の手続きをする人)を決めるなど、納め方を出国前に市区町村へ相談しましょう。最新は公式サイトでご確認ください。
健康保険と年金の切り替え
辞めたあとの健康保険は、共済組合の任意継続と国民健康保険の2つが主な選択肢です。任意継続は、退職の前日まで続けて1年以上加入していた人が、退職の日から20日以内に申し出て初回の掛金を納めれば、最長2年まで在職中に近い保障を続けられる仕組みです(地方職員共済組合の案内)。
おおむね1年以上海外に住むなら海外転出の届出をするのが目安で、日本に住所がなくなると国民健康保険の対象から外れます。任意継続を続けたまま海外で暮らす場合や現地で受診した場合の扱いは、加入する共済組合に確かめてください。
年金は、国内にいる間は国民年金への切り替えが必要で、退職日の翌日から14日以内に市区町村で手続きします(日本年金機構の加入の手続き)。海外に住む間は加入の義務がなくなりますが、日本国籍の人は任意で加入して保険料を納め続けることもできます(日本年金機構の任意加入の案内)。最新は公式サイトでご確認ください。
帰国後に公務員へ戻る3つの道
帰国後に公務員へ戻るには、職務経験を条件にする経験者採用、新卒と同じ枠の採用試験、辞めた自治体に戻る再採用制度の3つの道があります。どれも自動的に戻れる仕組みではないため、辞める前に条件を確かめておくことが欠かせません。
経験者採用は職務経験の年数で受けられる
社会人の経験がある人向けの経験者採用は、年齢の幅が広く、帰国後に目指しやすい道です。国の経験者採用試験(係長級の事務)は、受験資格を大学卒業などからの年数で決めていて、年齢の上限は書かれていません(人事院の経験者採用試験の案内)。
東京23区の特別区の経験者採用は、事務の1級職なら直近10年のうち4年以上、民間企業などで働いた経験が必要です(特別区人事委員会の案内)。特別区のよくある質問では、過去の特別区職員としての期間も経験に入ると明記されています。ただし数えられるのは1つの職場で週20時間以上・1年以上の経験なので、短期の仕事が多いワーホリ中の就労や、ほかの役所での勤務の扱いは特別区人事委員会に確かめましょう。
東京都のキャリア活用採用のように、官公庁での経験も数えると明記している例もあります。
新卒と同じ枠は生年月日に上限がある
新卒と同じ枠の採用試験は、受けられる生年月日に上限があります。国家公務員一般職(大卒程度)の2026年度の試験は、1996年4月2日以降に生まれた人などが対象で、30歳前後が上限の目安です(人事院の一般職試験の案内)。
条件は年度ごとに変わるので、受け直すなら帰国する年度の受験案内で生年月日を必ず確かめてください。上限を超える場合は、2026年度に1986年4月2日以降に生まれた人が対象だった国の社会人試験(係員級)や、経験者採用が選択肢になります。
辞めた自治体に戻る再採用制度
辞めた自治体に戻りたいなら、元職員を再び採用する制度があるかを確かめましょう。在職の年数や辞めてからの期間、対象になる退職の理由は自治体によって違います。
自治体・制度 | 在職の条件 | 退職の時期 |
|---|---|---|
広島市 帰ってきん採用 | 同じ職種で3年以上 | 退職後10年以内 |
文京区 カムバック採用 | 文京区で1年以上 | 2018年4月以降 |
千葉県 再採用選考 | 県で3年以上 | 退職後10年以内 |
広島市は勧奨退職を除いて退職の理由を問わず、文京区も受験資格に退職の理由の条件はありません。退職の理由を限っているのは千葉県で、結婚・出産・育児・介護などのやむを得ない事情で辞めた人が対象です(広島市・文京区・千葉県の案内)。ワーホリのための退職が当てはまるかは、戻りたい自治体に確かめましょう。
国も、一度辞めた人を再び採用する「アルムナイ採用」を2026年度から始めており、人事院の公募情報のページに募集が載っています。最新は公式サイトでご確認ください。
辞めて行くか続けるかを決める判断基準
辞めて行くか続けるかは、海外で何をしたいか、年齢の上限まであと何年か、戻り先の制度があるかの3つで考えると決めやすくなります。目的によっては、辞めずに使える制度が見つかることもあるでしょう。
目的が学び・国際協力・暮らしのどれか
海外で何をしたいのかを1つに絞ると、使える道が見えてきます。大学や大学院で学びたいなら自己啓発等休業、途上国で国際協力をしたいならJICA海外協力隊の現職参加、働きながら現地で暮らしたいなら退職してワーホリ、という分け方です。
Study Work Hub編集部の「ワーホリ・留学実態調査2026」(2026年6月更新)で、留学・ワーホリ経験者94件の良かった点を集計すると、「キャリア・将来」を挙げたのは14%でした。「語学力の向上」の71%と比べると少数です。キャリアアップだけを目的にせず、語学や暮らしそのものに価値を感じられるかもあわせて考えましょう。
ワーホリの年齢の上限から逆算する
外務省によると(2026年10月時点)、ワーホリは申請する時点で原則18〜30歳が対象です。オーストラリア・カナダ・韓国・アイルランドは原則25歳までで、各国の当局が認めれば30歳まで申請できます(外務省のワーキング・ホリデー制度のページ)。多くの国は1回しか参加できないため、行きたい国の年齢の上限から逆算して、辞める時期を決めましょう。
日本で7年間事務職として働き、キャリアに行き詰まりを感じていた私は、ワーホリの年齢制限ギリギリの30歳でアイルランドへ渡る決意をしました。
アイルランドに11か月滞在した人の振り返りです(体験談を読む)。公務員ではなく事務職の例ですが、迷っているうちに上限の年齢はすぐに近づくため、行きたい国の上限を先に確かめておくと判断の期限が見えてきます。条件は国ごとに違うため、最新は公式サイトでご確認ください。
辞める前に人事と戻り先の制度を確かめる
辞めると決める前に、所属先の人事担当と、戻りたい先の採用制度の両方を確かめておくと安心です。休業や派遣の制度が使えないかを人事担当に聞き、戻り先の再採用制度や経験者採用の条件を受験案内で読んでおきましょう。
特に日本では、ワーホリから帰国後の就職が想像以上に難しいです。
カナダのバンクーバーで1年過ごした24歳の人の、後輩への助言です(体験談を読む)。戻る道を先に確かめておけば、帰国後の不安を減らしたうえで出発の時期を決めやすくなります。
よくある質問
公務員の方がワーホリを考えるときに、よく迷う4つの疑問に短く答えます。
公務員でもワーホリに行けますか?
辞めれば行けますが、公務員の身分のまま行くのは難しいのが実情です。休業制度の対象は大学などでの修学や国際貢献活動で、休暇を過ごしながら働くワーホリはそのままでは当てはまりません。最新は公式サイトでご確認ください。
ワーホリのために休職扱いにできますか?
ワーホリそのものは、国の自己啓発等休業の対象に含まれていません。海外の大学で学ぶなら自己啓発等休業、国際協力ならJICA海外協力隊の現職参加が使える場合があるので、所属先の人事担当に相談しましょう。最新は公式サイトでご確認ください。
帰国後に公務員試験は受けられますか?
条件を満たせば受けられます。職務経験の年数を条件にする経験者採用は年齢の幅が広く、新卒と同じ枠の試験は生年月日に上限があるため、帰国する年度の受験案内で条件を確かめてください。最新は公式サイトでご確認ください。
公務員を辞めても退職金はもらえますか?
自分の都合で辞めても退職手当の対象になりますが、受け取れる割合は下がります。国家公務員で勤続10年以下なら、勤続年数から計算した額の6割に当分の間の調整率をかけた額が基本額になり、地方公務員は各自治体の条例で決まります。最新は公式サイトでご確認ください。
まとめ
公務員の身分のままワーホリに行くのは難しく、在職のまま海外に行くなら、大学などで学ぶ自己啓発等休業やJICA海外協力隊の現職参加が主な道です。辞めて行く場合は、自己都合で減る退職手当、翌年度の住民税、健康保険と年金の手続きを出国前に押さえておきましょう。
帰国後に戻る道には経験者採用や再採用制度がありますが、条件は自治体ごとに違います。まずは所属先の人事担当に使える制度を聞き、自分に合う国をワーホリ国診断で探して、年齢の条件は国別のページのワーホリガイドで確かめてみてください。
この記事の出典
- e-Gov法令検索「国家公務員の自己啓発等休業に関する法律」
- 人事院「自己啓発等休業 Q&A」
- 人事院「国家公務員の育児休業等の利用状況に関する調査結果について」
- JICA「現職参加」
- e-Gov法令検索「国家公務員退職手当法」
- 総務省「個人住民税」
- 地方職員共済組合「退職後の医療」
- 日本年金機構「国民年金に加入するための手続き」
- 日本年金機構「国民年金の任意加入の手続き」
- 人事院「経験者採用試験(係長級(事務))」
- 特別区人事委員会「経験者採用試験・選考」
- 特別区人事委員会「経験者採用試験・選考Q&A」
- 東京都「キャリア活用採用選考案内」
- 人事院「一般職試験(大卒程度試験)」
- 広島市「帰ってきん採用」
- 文京区「再採用選考(カムバック採用)」
- 千葉県「再採用選考(復職制度)」
- 人事院「国家公務員の公募情報」
- 外務省「ワーキング・ホリデー制度」