シェンゲン協定とワーホリ|90日ルールの数え方と周遊の注意点
ヨーロッパでワーホリをする人向けに、シェンゲン協定の「180日のうち90日」の扱いをまとめました。ワーホリ先の国にいる日とほかの加盟国にいる日の違い、計算例つきの数え方、ワーホリ前後の周遊、EES・ETIASの最新状況と日数を超えたときの扱いが分かります。

「ワーホリビザがあっても、シェンゲン協定の90日ルールは関係あるのだろうか」。せっかくヨーロッパにいるなら週末や休暇に周りの国も旅したいのに、日数を超えてしまわないか不安な方もいるはずです。ワーホリの前後に観光する日をどう数えるのか、という迷いも重なります。
本記事では、ワーホリ先の国にいる日と、ほかの加盟国にいる日で何が違うのかを、EUの規則と大使館の案内をもとにまとめました。欧州の協定国がシェンゲン圏の内か外かと、日付から日数を数える方法も計算例つきで確かめられます。
同じ流れで、ワーホリの前後の周遊やEES・ETIASの最新状況も見ていきましょう。
ワーホリビザとシェンゲン協定の90日ルール
ワーホリビザで滞在している間、ワーホリ先の国にいる日は「180日のうち90日」に数えません。一方でほかのシェンゲン加盟国にいられるのは180日のうち90日までで、その国では働けないという2つの線引きがあります。
ワーホリ先の国にいる日は90日に数えない
EUのシェンゲン国境規則は第6条2項で、滞在許可や長期滞在ビザで認められた期間を、短期滞在の日数の計算に入れないと定めています。ワーホリビザは国が出す長期滞在ビザ(Dビザ)や滞在許可にあたるため、ドイツでワーホリ中ならドイツにいる日は90日に含まれません。
欧州委員会の滞在日数の計算ツールも、長期滞在ビザや滞在許可で過ごした期間は入力しないよう案内しています。ただしこれは「ワーホリ先の国にいる日」の話で、日数をまったく気にしなくてよいという意味ではありません。2026年10月時点の規則なので、最新は公式サイトでご確認ください(EUR-Lexのシェンゲン国境規則)。
ほかの加盟国は180日のうち90日まで
ワーホリ先とは別のシェンゲン加盟国に旅行できるのは、180日のうち90日までです。シェンゲン協定実施条約の第21条は、加盟国の長期滞在ビザや滞在許可を持つ人に、ほかの加盟国を「180日のうち90日」の範囲で自由に移動することを認めています。
在日ドイツ大使館の案内も、ワーホリビザでほかのシェンゲン加盟国に観光で入れるのは180日のうち90日までとしています。ワーホリビザの人はEUの出入国システムに記録されないため、旅行の出入りの日付は自分で控えておくと安心です。最新は公式サイトでご確認ください(在日ドイツ大使館のワーホリビザの案内)。
ワーホリ先以外の加盟国では働けない
ワーホリビザで働けるのは、そのビザを出した国の中だけです。ドイツ連邦移民難民庁は、ほかの加盟国に90日まで滞在できるのは現地で働かない場合に限り、その国で働くならその国の滞在許可が必要だと説明しています。
旅行先でアルバイトをするのは避け、会議への出席やリモートワークのような働き方を考えている場合は、行き先の国の大使館に扱いを確かめましょう。最新は公式サイトでご確認ください(ドイツ連邦移民難民庁のEU内の移動の説明)。
欧州のワーホリ協定国とシェンゲン圏
日本とワーホリ協定を結ぶ欧州の23か国のうち、シェンゲン圏に入っているのは21か国で、圏外は英国とアイルランドの2か国です。どちらでワーホリをするかで、旅行の日数の数え方が変わります。
欧州の協定国23か国のうち21か国が圏内
外務省によると、日本のワーホリ協定は2026年4月1日時点で32か国・地域です。欧州の協定国23か国のうち、2026年10月時点でシェンゲン圏に入っているのは表の上の5行の21か国です(欧州委員会の29か国の一覧による)。
地域 | ワーホリ協定国 |
|---|---|
西欧・中欧 | フランス・ドイツ・オランダ・ルクセンブルク・オーストリア |
南欧 | スペイン・ポルトガル・イタリア・マルタ |
北欧 | デンマーク・ノルウェー・スウェーデン・フィンランド・アイスランド |
中東欧 | ポーランド・チェコ・スロバキア・ハンガリー |
バルト三国 | エストニア・ラトビア・リトアニア |
圏外の2か国 | 英国・アイルランド |
2026年に協定が始まったマルタとイタリアも圏内なので、欧州のワーホリ先はほとんどがこの記事のルールの対象です。加盟の状況や協定国は変わることがあるため、最新は公式サイトでご確認ください(欧州委員会のシェンゲン圏の説明)。
EU加盟国とシェンゲン加盟国は別もの
EUに入っている国と、シェンゲン圏に入っている国は同じではありません。アイルランドとキプロスはEU加盟国ですがシェンゲン圏の外で、アイスランド・ノルウェー・スイス・リヒテンシュタインはEUの外ですがシェンゲン圏の中です。
英国はEUにもシェンゲン圏にも入っていません。シェンゲン圏は2025年1月1日にブルガリアとルーマニアが全面的に加わり、29か国になりました。旅行先を決めるときは「EUかどうか」ではなく「シェンゲン圏かどうか」で日数を考え、加盟の状況は最新を公式サイトでご確認ください(駐日EU代表部 EU MAGの解説)。
英国とアイルランドからの旅行は観光と同じ
英国やアイルランドでワーホリをしている人がシェンゲン圏に旅行すると、その日は日本からの観光客と同じく「180日のうち90日」に数えます。英国やアイルランドの滞在許可は、シェンゲン加盟国が出したものではないためです。
逆に、英国やアイルランドにいる日はシェンゲン圏の日数に入りません。扱いが変わることもあるため、最新は公式サイトでご確認ください。
さらに、ダブリンはヨーロッパ各国へのアクセスが非常に良く、格安航空会社(ライアンエアー)を利用して、週末にフランスやスペイン、イタリアなどへ数千円で旅行に行けることも大きな魅力でした。
ダブリンでワーホリをした30歳の人の体験談です(体験談を読む)。週末旅行でも入国日と出国日はそれぞれ1日と数えるため、回数が増えるほど日数は積み上がります。
180日のうち90日の数え方と計算例
「180日のうち90日」は、滞在するそれぞれの日から過去180日をさかのぼり、シェンゲン圏にいた日の合計が90日を超えないようにするルールです。入国日と出国日も1日と数え、古い日が1日ずつ外れていく仕組みなので、日程は表に書き出して確かめましょう。
入国日と出国日もそれぞれ1日と数える
シェンゲン国境規則は、入国した日を滞在の初日、出国した日を最終日として数えると定めています。5月1日に入って5月10日に出れば、9日ではなく10日の滞在です。
日数は国ごとではなく、シェンゲン圏の29か国をまとめて数えます。また「180日たてば全部リセット」ではなく、日を追うごとに180日より前の日が1日ずつ外れていきます。欧州委員会は、滞在する各日から180日をさかのぼって合計が90日以内か確かめるよう案内しており、最新は公式サイトでご確認ください(欧州委員会の短期滞在の計算ツール)。
ドイツでワーホリ中に3か国を旅する例
ドイツのワーホリビザが2027年4月1日から1年有効な人が、次の日程で旅行する架空の例で数えてみます。
期間 | 過ごし方 | 数える日数 |
|---|---|---|
3月15日〜31日 | パリから入り観光 | 17日 |
4月1日〜 | ドイツでワーホリ | 数えない |
6月1日〜20日 | フランス旅行 | 20日 |
8月1日〜25日 | イタリア旅行 | 25日 |
10月1日〜30日 | スペイン旅行 | 30日 |
10月30日から180日をさかのぼると3月の観光は外れ、合計は75日で90日以内に収まります。この人が11月10日から別の国へ出かけるなら、続けていられるのは11月24日までの15日間です。20日間いるつもりで出かけると、11月25日に合計91日となって上限を超えてしまいます。
欧州委員会の計算ツールで残り日数を確認
自分の日程は、欧州委員会のウェブサイトにある短期滞在の計算ツール(Short-stay calculator)で確かめると便利です。これまでの滞在を確かめる「check」と、先の日付で何日いられるかを計算する「planning」の2つのモードがあり、日付は日・月・年の順に入力します。
欧州委員会はワーホリビザなどの長期滞在ビザで過ごした期間を入れないよう案内していますが、ほかの加盟国に旅行した日も入れておくと、180日のうち90日の上限と観光の日をまとめて確かめられ、安全側の確認になるはずです。駐日EU代表部も、結果は目安で法的な保証ではなく、確実に知りたいときは各国の出入国管理当局に確かめるよう案内しています。EUの出入国システムの残り日数の確認サービスは短期滞在の人向けで、ワーホリビザの期間は対象外です(EES公式サイトの残り日数の確認)。最新は公式サイトでご確認ください(EU MAGの計算ツールの解説)。
ワーホリの前後に周遊するときの日数
ワーホリビザが有効になる前と切れた後の観光は、ふつうの短期滞在として「180日のうち90日」に数えます。入国する国の空港や、ビザが切れた後の残り方には国ごとの違いもあるため、前後の旅行は大使館の案内とあわせて計画しましょう。
ビザが有効になる前の観光は90日に含まれる
シェンゲン国境規則が日数の計算から外すのは、滞在許可や長期滞在ビザで認められた期間だけです。そのため、ワーホリビザが有効になる前にビザなしで観光していた日は、通常どおり90日に数えます。
ビザの取り方は国によって違います。ドイツは日本国籍の人がビザなしで入国し、現地の外国人局で申請することもでき、その場合は入国から90日以内の申請が必要です。フランスは在日フランス大使館でビザを取り、申請時に入国予定日を伝える方式です。最新は公式サイトでご確認ください(ドイツ滞在令第41条)。
ワーホリ先とは別の国の空港から入るとき
ワーホリビザを持っていれば、パリなどほかの加盟国の空港で入国審査を受け、そのままワーホリ先の国へ移動できます。入国審査は最初に入った国で行われ、その後の国境では原則として審査がありません。
ただし外務省は、現地に着いてから滞在許可を取る予定の人は、経由する国で入国を拒否される可能性があると注意しています。ドイツ大使館は入国時に生活資金と保険の証明を持つよう勧めているので、審査で見せられるようにしておきましょう。最新は公式サイトでご確認ください(外務省 海外安全ホームページのシェンゲン領域への渡航の案内)。
ビザが切れた後の観光は最大90日が目安
駐日EU代表部の解説によると、就労ビザや居住許可の期間が過ぎた場合は、失効した日からさかのぼって「180日のうち90日」のルールが当てはまります。ワーホリビザで過ごした期間は数えないため、計算の上では最大90日の観光が可能です。ただしビザが切れる前の180日以内にほかの加盟国を旅行した日があると、合算する考え方では残れる日数が90日より短くなります。
一方で、ワーホリビザそのものはフランスやドイツでは延長できません。国内にとどまったまま観光の滞在に切り替えられるかは国ごとに確かめる必要があり、パスポートも出国予定日から3か月以上の残りが求められます。残る予定なら大使館に確認し、最新は公式サイトでご確認ください。
EES・ETIASと日数を超えたときの扱い
EUの新しい出入国システムEESに、ワーホリビザの人は登録されません。事前の渡航認証ETIASは2026年10月時点でまだ始まっておらず、日数を超えた場合は入国拒否や入国禁止もあるため、前後の観光と旅行の日付を自分で記録しておくことが欠かせません。
ワーホリビザの人はEESに登録されない
EESは、短期滞在の旅行者の顔写真と指紋を登録し、出入国を記録する仕組みです。2025年10月12日に始まり、2026年4月10日から全面的に運用され、パスポートへのスタンプはなくなりました。
EES公式サイトと在日フランス大使館によると、長期滞在ビザや滞在許可を持つ人は登録の対象外です。ただしワーホリビザが有効になる前や切れた後の観光、英国やアイルランドからの旅行は短期滞在なので記録されると考えられます。最新は公式サイトでご確認ください(EES公式サイトの対象外の人の説明)。
ETIASは2026年10月時点で開始前
ETIASは、日本などビザが免除される国の人がシェンゲン圏など30か国に入る前に申請する渡航認証です。公式サイトは2026年10月時点で「まだ運用していない」とし、開始日は数か月前に知らせるとしています。手数料は20ユーロ、有効期間は3年か、申請に使ったパスポートの期限のどちらか早いほうまでの予定です。
長期滞在ビザや、キプロス以外の対象国が出した滞在許可を持つ人は対象外なので、ワーホリビザで入国するなら不要です。前後の観光や英国・アイルランドからの旅行では、始まれば必要になります。在日フランス大使館は、今申請を受け付けるサイトは詐欺だと注意しているので、最新は公式サイトでご確認ください(ETIAS公式サイトの対象者の説明)。
日数を超えると入国拒否や入国禁止もある
すでに180日のうち90日を使った人が再び入ろうとすると、国境で入国を断られます。EES公式サイトは、超過して滞在した人は送還の手続きの対象になり、入国禁止が付く場合もあり、その期間は原則5年以内と説明しています。
罰金などの罰則は国ごとの法律しだいです。「知らなかった」では済まないので、旅行の出入りの日付を手帳やスマートフォンに記録し、計算ツールで残り日数を確かめる習慣をつけましょう。最新は公式サイトでご確認ください(EES公式サイトのよくある質問)。
よくある質問
ヨーロッパでのワーホリとシェンゲン協定について、4つの質問に短く答えます。
ワーホリ中にヨーロッパを周遊できますか?
できます。ワーホリ先以外の加盟国には180日のうち90日まで観光で滞在でき、ワーホリ先の国にいる日は数えません。旅行先の国では働けないので、アルバイトはワーホリ先だけにしましょう。最新は公式サイトでご確認ください。
ワーホリ前の観光と旅行の日は合算しますか?
考え方が分かれやすい点です。ワーホリ前の観光の日も含めて、ほかの加盟国にいる日を合計90日以内に収める計画にしておけば、どちらの考え方でも安全です。迷うときは大使館に確かめ、最新は公式サイトでご確認ください。
ほかの加盟国でリモートワークはできますか?
旅行先でのアルバイトなど現地の仕事はできません。ワーホリ先の雇い主や日本の会社の仕事をほかの国で続ける場合は、国や仕事の内容で扱いが変わる可能性があるため、行き先の大使館で確かめましょう。最新は公式サイトでご確認ください。
パスポートは常に持ち歩く必要がありますか?
外務省は、シェンゲン圏内の移動でも抜き打ちで身分確認が行われることがあるため、パスポートを常に持ち歩くよう呼びかけています。2026年10月時点ではドイツやフランスなどが域内の国境で一時的に審査をしているので、ワーホリビザの書類も一緒に持ち、最新は公式サイトでご確認ください。
まとめ
ワーホリビザでワーホリ先の国にいる日は90日に数えませんが、ほかのシェンゲン加盟国に行けるのは180日のうち90日までで、その国では働けません。ビザが有効になる前と切れた後の観光は通常の短期滞在として数え、英国やアイルランドからの旅行も観光客と同じ扱いです。
まずは旅行の予定を日付つきで書き出し、欧州委員会の計算ツールで日数を確かめましょう。国ごとの条件はドイツやフランスのワーホリガイドで確かめられます。
この記事の出典
- Regulation (EU) 2016/399(Schengen Borders Code)
- Regulation (EU) No 265/2010
- Regulation (EU) No 610/2013
- 欧州委員会「Schengen area」
- 欧州委員会「Short-stay calculator」
- 欧州委員会「Temporary Reintroduction of Border Control」
- 駐日EU代表部 EU MAG「EU域内の移動の自由(シェンゲン協定)」
- EES「To whom does the EES not apply?」
- EES「FAQ」
- EES「Check how long you can stay」
- ETIAS「Who should apply」
- ETIAS「What is ETIAS」
- 在日ドイツ大使館「Visa for a Working Holiday」
- ドイツ滞在令(AufenthV)第41条
- ドイツ連邦移民難民庁「Mobility in the EU」
- 在日フランス大使館「ワーキングホリデービザ」
- 在日フランス大使館「ヨーロッパの新国境管理システム「EES」が2026年4月10日より運用開始」
- 在日フランス大使館「ヨーロッパへの渡航」
- 外務省 海外安全ホームページ「シェンゲン領域諸国への渡航」
- 外務省「ワーキング・ホリデー制度」