ワーホリで失業保険はもらえる?帰国後に受け取る条件と手順
ワーホリ中に失業保険(雇用保険の基本手当)は受け取れるのかを、厚生労働省とハローワークの公式情報で確認しました。受給期間を延長できる6つの延長事由にワーホリが含まれない根拠、申告せずに受給した場合の処分、帰国後に受け取るための逆算の考え方まで。

ワーホリのために会社を辞めると決めたとき、失業保険が使えるなら渡航資金がずいぶん楽になる。そう考えながら渡航費を計算している方は多いはずです。ところが「もらえない」という説明と「延長という手がある」という説明が混在していて、どちらを信じればいいのか分からなくなります。
先にお伝えすると、海外でワーホリをしている間は受け取れません。受給期間を延長できる理由はハローワークが公表しており、その6つにワーキングホリデーは含まれていないからです。
この記事では、その根拠と、申告せずに受給した場合に何が起きるのかを公式の記載で確認します。そのうえで、帰国後に受け取るための考え方と、失業給付を外した資金計画までをお渡しします。
ワーホリ中に失業保険はもらえない
まず結論です。海外でワーキングホリデーをしている間、失業保険(失業手当とも呼ばれる、雇用保険の基本手当)を受け取ることはできません。
理由は制度の入口にあります。何をもって「失業している」とみなすかの条件を、海外にいると満たせないからです。以下は2026年7月時点の公表内容で、実際の判断は管轄のハローワークが行います。
失業の状態には3つの条件がある
厚生労働省は、失業の状態を次のように定義しています。3つの条件を「全て満たす場合」とされている点が重要です。
- 積極的に就職しようとする意思があること
- いつでも就職できる能力(健康状態・環境など)があること
- 積極的に仕事を探しているにもかかわらず、現在職業に就いていないこと
出典は厚生労働省「Q&A~労働者の皆様へ(基本手当、再就職手当)~」です。東京ハローワークの求職者給付Q&Aも同じ趣旨で書かれています。就職したいという積極的な意思といつでも就職できる能力があり、それでも就職できない状態にある方、という説明です。
つまり基本手当は、仕事を失った人への見舞金ではありません。次の仕事を探している人を支えるための給付です。ここが分かると、このあとの話がすべてつながります。
海外にいる間は条件を満たせない
3つの条件を海外でのワーホリに当てはめてみましょう。少なくとも3つ目の「積極的に仕事を探しているにもかかわらず、現在職業に就いていない」は満たせません。
日本での就職活動をしていない状態だからです。加えて、受け取るには来所も必要になります。厚生労働省は次のように案内しています。
雇用保険(基本手当)の受給手続をした日から、原則として4週間に1回失業認定日に住居所を管轄するハローワークへ来所いただき、失業していることの認定をして支給します
海外にいる間は、この認定日に行けません。
さらにワーホリビザは現地での就労が認められるビザです。制度の建前としても、日本で職を探しているという説明とは噛み合いません。
受給できるのは離職の翌日から1年
もうひとつ押さえておきたいのが期限です。東京ハローワークは「離職の日の翌日から1年間を『受給期間』といい、受給期間中に失業している期間について『所定給付日数』の給付を受けることができます」と案内しています。
この1年という枠が、ワーホリとの相性を決めます。1年のワーホリに行って帰国したときには、受給期間がほとんど残っていない計算になるからです。
受け取れる日数(所定給付日数)は年齢・雇用保険に入っていた期間・離職理由によって変わります。ここでは金額や日数の目安は示しません。ご自身の条件は、離職票を持って管轄のハローワークでご確認ください。
受給期間の延長はワーホリに使えるか
調べていると「受給期間の延長という制度がある」という情報に行き当たります。1年の受給期間を後ろにずらせるなら、帰国後に受け取れるのではないか。そう考えるのは自然です。
ただ、この制度は誰でも使えるものではありません。延長が認められる理由は公表されており、そこにワーキングホリデーは入っていないのです。
延長が認められる6つの理由
北海道ハローワークは、受給期間を延長できる場合として次の6つを挙げています。原文の表記に沿って掲載しました。
# | 延長が認められる理由 |
|---|---|
1 | 病気、ケガ |
2 | 妊娠、出産 |
3 | 育児(3歳未満の子に限ります。) |
4 | 親族の看護または介護(※親族とは、6親等以内の血族、配偶者及び3親等以内の姻族をいいます。) |
5 | 配偶者の海外勤務への同行 |
6 | 青年海外協力隊など公的機関が行う海外技術指導による海外派遣(派遣前の研修を含みます。) |
延長できる日数は最大限3年間、申請期限は「職業につくことができない日が30日継続した日の翌日から1か月以内」とされています。出典は北海道ハローワーク「受給期間を延長することができる場合は」です。
ワーホリはどれにも当てはまらない
6つを上から見ていくと、自分の意思で行くワーキングホリデーが入る余地はありません。海外に関わる項目は5番と6番の2つありますが、いずれも本人以外の事情による渡航です。
5番は配偶者の海外勤務への同行、6番は青年海外協力隊のような公的機関の派遣を指しています。どちらも「自分の希望で行くのではなく、行かざるを得ない状況」という共通点があります。ワーホリは本人が選んで行くものなので、この枠には入りません。
そもそも延長制度は、働きたいのに働けない期間の分だけ、1年の受給期間を後ろに延ばすしくみです。ワーホリは現地で働くことが認められている滞在なので、働けない状態とも言えません。
「30日以上働けない状態が続けば延長できる」という説明だけが独り歩きすると、ワーホリも当てはまりそうに見えてしまいます。しかし判断の順序は逆で、まず上の6つに当てはまるかを見て、そのうえで30日という日数の条件を見ます。判断のもとになるのは、対象となる理由が6つ公表されているという事実です。
海外が理由でも認められる場合
一方で、渡航の事情によっては対象になる可能性もあります。たとえば配偶者の海外赴任に同行して、その滞在先でワーキングホリデービザを取得するようなケースです。
この場合の主たる理由は「配偶者の海外勤務への同行」なので、5番に当てはまる余地があります。ただし個別の判断になるため、自己判断で延長できると決めつけないでください。
また、地域のハローワークによって案内の書き方や必要書類の運用が異なることもあります。少しでも当てはまりそうな事情がある方は、渡航前に管轄のハローワークへ相談してください。窓口で確認しておけば、渡航後に判断へ迷わずに済みます。
申告せずに受給するとどうなるか
「渡航したことを黙っていればどうにかなるのでは」と考える方もいます。そう思ってしまうほど、退職前後はお金の不安が大きいのでしょう。ただ、この記事でその方法をお伝えすることはありません。
代わりに、そうした場合に何が起きるのかを制度の側から確認します。結論から言えば、割に合わない選択です。
黙って渡航すると不正受給になる
海外にいる期間について事実と違う申告をすれば、それは虚偽の申告にあたります。厚生労働省のQ&Aも、申告を怠って受給した場合を不正受給として扱っているのです。処分の内容は次の見出しで引用します。
基本手当は、認定日ごとに失業の状態を確認しながら支給されるしくみです。認定日には失業認定申告書を出しますが、そこに書くのは次の2点です。
- 前回の認定日からの期間に働いたかどうか
- その期間にどんな求職活動をしたか
ここに事実と違う内容を書けば、虚偽の申告になります。「知らなかった」で済む話でもありません。認定日ごとに自分で申告書を出している以上、事実と異なる内容を書けば、故意でないという説明は通りにくいでしょう。
3倍の額の納付を命じられることがある
処分の内容も公表されています。次は、受給中にアルバイト・パートをした場合の申告について答えた設問(Q36)からの引用です。
申告をせずに、雇用保険(基本手当)を受給した場合は不正受給となり、以降の雇用保険(基本手当)の支給が停止するとともに、不正に受給した額の3倍の額の納付を命じられる場合があります。
設問はアルバイトの申告についてですが、申告を怠って受給した場合の扱いという点では、渡航を申告しない場合も同じ考え方になると読めます。
受け取った額を返すだけでなく、その3倍の納付を求められ、以降の支給も停止することになります。渡航資金の計算に入れられる選択肢ではありません。
判断に迷ったら先に相談する
自分の状況が微妙だと感じる場合は、渡航前にハローワークへ相談してください。相談したことで受給資格が失われるわけではありません。
たとえば、退職から渡航までに数か月あって、その間は日本で就職活動をする予定がある場合です。あるいは短期の渡航で、帰国後すぐ就職活動を始める予定がある場合もあります。
いずれも、受給の対象になるのは日本にいて就職活動をしている期間だけです。渡航している期間そのものは対象になりません。その前提であれば、通常の受給の枠内で考えられます。
渡航の予定を伝えたうえで、いつからいつまでが対象になるのかを確認しておけば安心です。
制度の内容は改定されることがあります。本記事は2026年7月時点の公表内容にもとづくものなので、実際の手続きの前には管轄のハローワークで最新の案内をご確認ください。
帰国後に受け取るための進め方
渡航中は受け取れませんが、道が完全に閉じるわけではありません。受給期間は離職の翌日から1年あるため、その枠が残っていれば帰国後に手続きできます。
鍵になるのは、退職日と帰国時期の関係です。ここから逆算して考えます。
受給期間の1年から逆算する
考え方はシンプルです。離職の翌日から1年が経つ日までに、失業の認定を受けて給付を受け取る必要があります。
1年のワーホリに行くと、この枠はほぼ使い切られます。退職してすぐ渡航し、まるまる1年滞在して帰国すれば、受給期間の残りはわずかです。手続きをしても、受け取れる日数はごく限られたものになります。
一方、渡航期間が半年程度なら話は別です。帰国時点で受給期間が半年ほど残っていれば、その中で認定を受けながら受け取れる可能性があります。所定給付日数のすべてを受け取れるかどうかは、日数と残り期間の兼ね合いで決まります。
退職日と帰国時期で変わる選択肢
次の「退職日から逆算する受給期間の判断表」で、自分がどのパターンに近いかを確認してください。あくまで考え方の整理で、実際の可否は管轄のハローワークが判断します。離職票が届いたら、この表と照らし合わせてみましょう。
退職から帰国までの期間 | 受給期間の残り | 取れる選択肢 |
|---|---|---|
3か月以内(短期渡航) | 9か月ほど | 帰国後すぐ手続きすれば受け取れる余地が大きい。給付制限と所定給付日数によって変わる |
6か月ほど | 半年ほど | 受け取れる余地はあるが、給付制限があると開始が後ろにずれる |
1年(ビザいっぱい) | ほぼ残らない | 受給は現実的でない。資金計画から外して考える |
1年を超える | なし | 受給期間が終了している。次の就職で雇用保険に入り直す |
表にある給付制限とは、自己都合で退職したときに支給の開始まで置かれる期間のことです。なお所定給付日数は年齢・雇用保険に入っていた期間・離職理由で変わるため、実際の見通しは離職票を持って管轄のハローワークで確認してください。
渡航期間を自分で決められる段階なら、この表を資金計画とあわせて見てください。半年で帰るか1年いるかは、給付の有無だけで決める話ではありませんが、判断材料のひとつにはなります。
ただし滞在を短くすれば良いという話でもありません。現地で仕事に慣れて収入が安定してきた頃に帰国時期が来てしまうためです。当サイトの体験談にも、収入が立たない期間があったという声が複数あります。
離職票は渡航前に受け取っておく
帰国後に手続きする可能性が少しでもあるなら、離職票は渡航前に受け取っておいてください。会社から自宅に郵送される書類なので、渡航後だと受け取れないことがあります。
実家など、渡航中も郵便物を受け取れる住所を会社に伝えておくのが確実です。家族に開封と保管を頼んでおけば、帰国後すぐ動けます。
なお、予定より早く途中帰国した場合は、その分だけ受給期間が多く残ります。帰国したら離職票を持って、残りがどれくらいあるかを確認してみてください。
すでに渡航してしまった方にも、打てる手はあります。会社に連絡すれば再発行や送付先の変更を依頼できますし、家族に受け取っておいてもらう方法もあるでしょう。帰国後に離職票を持って管轄のハローワークへ行けば、受給期間が残っているかどうかをその場で確認してもらえます。
退職に伴う手続きは離職票だけではありません。住民票・年金・健康保険の扱いは社会人ワーホリの退職タイミングと手続きにまとめているので、あわせてご覧ください。
失業給付を当てにしない資金計画
ここまでを踏まえると、渡航資金の計算から失業給付を外すのが現実的です。しかも渡航直後は、こちらも収入が途切れます。
入ってこない期間が二重に重なります。実際の数字で確認しましょう。
渡航直後は収入が途切れる
現地に着いてすぐ働けるわけではありません。住まいを決めて、銀行口座を開いて、応募して、採用されて、初めての給料日が来る。ここまでに数週間から数か月かかります。
カナダのバンクーバーに渡った男性は、この時期をこう振り返りました。
“また仕事を見つけるまでに時間がかかり最初の1ヶ月半ほどは収入がなく貯金を切り崩す生活になりました。
男性 23歳 カナダ・バンクーバー 8ヶ月 ★4.0 体験談を読む →
当サイトの体験談には、到着直後に仕事が見つからず貯金を切り崩したという内容が、この方以外にも複数寄せられています。渡航してすぐ収入が入る前提で資金を組むのは危険です。
生活費と収入の実額から逆算する
では、その期間にいくら必要になるのか。当サイトが渡航経験者に行った実態調査の数字が目安になります。
クラウドソーシングでのアンケート募集と体験談投稿で集め、編集部が確認・校正のうえ統計化したもので、2026年6月更新時点の集計です。回答者の自己申告にもとづくため、渡航先や滞在の仕方によって幅があります。
項目 | 中央値(月) | 回答数 |
|---|---|---|
生活費の合計 | 18.0万円 | 88件 |
収入 | 19.0万円 | 75件 |
渡航時の年代別に見ると、25〜29歳の生活費の中央値は18.0万円(34件)、30〜34歳は15.0万円(9件)でした。30〜34歳は件数が少ないため参考程度に受け止めてください。
全体としては、収入が生活費をわずかに上回る程度というのが渡航後の実態です。
つまり働き始めてからも、貯金が大きく増えるわけではありません。
仕事が決まるまでを2か月と見るなら、生活費だけで36万円ほどかかります。ここに渡航前の航空券・ビザ・保険と、住まいの保証金などの初期費用が乗ってくるのです。
失業給付をこの計算に入れないほうが安全だという理由は、数字を見るとそう判断できます。集計の全体はワーホリ・留学実態調査で公開しています。
帰国後の生活費も見込んでおく
見落としやすいのが帰国後です。帰った翌日から給料が入るわけではありません。
受給期間が残っていて基本手当を受け取れる場合も、手続きをしてすぐ振り込まれるわけではないため、当面の生活費は自分で用意することになります。カナダで13か月を過ごした女性は、帰国後についてこう書いていました。
“特に日本では、ワーホリから帰国後の就職が想像以上に難しいです。
女性 24歳 カナダ・バンクーバー 13ヶ月 ★5.0 体験談を読む →
就職までに時間がかかることを前提に、帰国後2〜3か月分の生活費を残して帰るくらいの計画にしておくと落ち着いて動けます。帰国後の就職活動の進め方はワーホリ帰国後の就活完全ガイドにまとめました。
よくある質問
最後に、失業保険とワーホリについて相談されることの多い5つの疑問にお答えします。制度は改定されることがあるため、実際の手続きの前には管轄のハローワークでご確認ください。
退職理由がワーホリだと不利になりますか
受給資格そのものが失われるわけではありません。ただしワーホリを理由にした退職は自己都合にあたるのが一般的で、会社都合とは扱いが変わります。
自己都合の場合、手続きをしてから支給が始まるまでに一定の期間が置かれます。これが判断表で触れた給付制限です。
期間の長さは制度改定で変わることがあるため、離職票を持ってハローワークで確認してください。
休職して行く場合はどうなりますか
休職は在職している状態なので、失業給付の対象になりません。会社との雇用関係が続いているためです。
そもそも失業していないので、受給の可否を考える場面が来ません。休職して渡航する場合に何が発生するのかはワーホリで休職・休学はできる?にまとめました。
1年より短い渡航なら受け取れますか
受給期間が残っていれば、帰国後に手続きできる可能性があります。受給期間は離職の翌日から1年なので、渡航が短いほど残る期間は長くなります。
確認すること | 目安 |
|---|---|
受給期間の残り | 離職の翌日から1年のうち、帰国時点で残っている期間 |
手続きから振込までの生活費 | 渡航中の生活費の中央値は月18.0万円(88件) |
ただし渡航している間に受け取れるわけではありません。あくまで帰国して、日本で就職活動を始めてからの話です。
残り期間と所定給付日数の関係で受け取り切れないこともあるため、帰国後は早めに手続きしてください。手続きから振り込みまでの間の生活費は自分で用意することになります。
上の表にある金額は渡航先での中央値なので、日本の生活費とそのまま同じではありません。それでも同じくらいの支出が続く前提で用意しておくと、落ち着いて動けます。
30歳前後で退職して行く場合も同じですか
制度の扱いは年齢で変わりません。失業の状態の条件も受給期間の1年も、20代でも30代でも同じです。
変わるのは資金の前提のほうです。当サイトの実態調査では、渡航時に30〜34歳だった方の生活費の中央値は月15.0万円(9件)でした。
件数は少ないものの、20代後半より抑えている傾向が見えます。生活の組み立て方に幅が出る年代なのかもしれません。
ワーホリ中の収入は申告が必要ですか
基本手当を受け取っていない期間については、失業の認定を受ける場面自体がないため、ハローワークへ申告する機会もありません。
一方で、日本の所得税の扱いは別の話になります。日本を出るときに住民票を抜いたかどうかなどで変わるため、税金については税務署や自治体でご確認ください。
まとめ
海外でワーホリをしている間、失業保険は受け取れません。失業の状態とされる3つの条件を満たせないためで、受給期間の延長が認められる6つの理由にもワーキングホリデーは含まれていません。
申告せずに受給すれば不正受給にあたり、3倍の額の納付を命じられる場合があります。渡航資金の計算には入れないでください。
今日やることは2つです。
- 渡航資金の見積もりから、失業給付の分を外して計算し直す
- 離職票を渡航中も受け取れる住所へ送るよう、会社に伝える
社会人がワーホリに行くときの準備全体は社会人のワーホリ完全ガイドにまとめています。