2026年10月23日

社会人が海外大学院に行くには?年齢の条件と退職・休職・費用

社会人が海外の大学院に進む方法を、日本の省庁・JASSO・各国の移民当局と大学の公式情報で2026年10月時点で整理。年齢・学士・職歴の条件、退職・休職・社費・オンラインの選び方、研究型と授業型・家族の帯同の違い、費用と奨学金・教育ローンの注意点、準備の進め方と住民税・年金の手続き、卒業後に働ける制度まで解説します。

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社会人が海外大学院に行くには?年齢の条件と退職・休職・費用

「社会人になってからでも、海外の大学院に行けるのだろうか」。年齢や仕事を辞めるかどうか、国や学校によっては1,000万円を超えることもある費用を考えると、挑戦するか迷う人もいるでしょう。奨学金やビザの条件も、学生とは違う点があって分かりにくいものです。

そこで本記事では、社会人が海外の大学院に進むための条件と、退職・休職・社費・オンラインの選び方を、日本の省庁や日本学生支援機構(JASSO)、各国の移民当局・大学の公式情報をもとに2026年10月時点で整理します。年齢や在職が条件になる制度も示すので、自分に合う進め方を考えられるはずです。

あわせて、費用と資金の集め方、働きながらの準備の進め方、卒業後に現地で働くための制度も解説します。

社会人でも海外の大学院に進める

海外の大学院には社会人になってから進む人も多く、入学に年齢の上限を置かないと明記している大学もあります。学士は原則必要で、MBAなどでは職歴も出願の条件になる点に注意が必要です。

入学に年齢の上限を置かない大学がある

ケンブリッジ大学のMBAはFAQで「年齢の上限はあるか」に「No.」と答えていて、ベルリン自由大学の法学修士も入学に年齢の制限はないとしています。日米教育委員会のフルブライト奨学金の大学院留学プログラムも、年齢制限はありません。

ただし、奨学金や卒業後のビザには年齢が条件になるものがあります。「入学できるか」と「お金や卒業後のビザで年齢が関係するか」は、分けて考えましょう。

学士は原則必要でMBAは職歴も問われる

海外の大学院に進むには、原則として学士の学位が必要です。例えばケンブリッジ大学のMBAは、英国の上位の優等学位(2:1)相当の学士、2年以上の職歴、GMATかGREのスコア、上司からの推薦状を最低条件に挙げています。

英国の質保証機関QAAも、修士には学士を持つ人のほか、仕事などで経験を積み、修了できると大学が判断した人が入学することも多いと説明しています。マンチェスター大学のGlobal MBA(オンラインと対面を組み合わせた課程)のように、学位の代わりに8〜10年の管理職経験で検討する例外的な課程もありますが、学士がない場合はまず学部で学位を取るのが基本の道です。

アメリカの大学院生は30歳以上が4割超

アメリカ教育統計センター(NCES)が「教育統計ダイジェスト2023」で公表した在籍者の統計では、2021年秋にアメリカの大学院レベルに在籍していた約321万人のうち、30歳以上が約44.5%、40歳以上も約18.9%でした(表の人数からの計算値で、国籍を問わない全体の数字)。30代以上で大学院に通うことは、海外では珍しくないといえます。

MBAでは、社会人経験があることが前提になっています。例えばハーバード・ビジネス・スクールの2027年卒のクラスは、平均職歴が4.9年でした。

退職・休職・社費・オンラインの選び方

社会人が海外の大学院に進む方法は、退職・休職・社費留学・働きながらのオンラインの4つに分けられます。どれを選ぶかで使える奨学金や給付、卒業後のビザが変わるため、比べてから決めましょう。

4つの進め方の違い

4つの進め方の主な利点と注意点は、次のとおりです。

進め方

主な利点

主な注意点

退職

JASSOの給付型を受けられる

収入がなくなる

休職

戻る職場がある

制度のある企業は5.7%

社費留学

学費や給与の負担が軽い

社内の選考がある

オンライン

収入を保てる

現地の就労ビザに使えない

厚生労働省が2026年7月に公表した能力開発基本調査(常用労働者30人以上の企業が対象)では、教育訓練休暇制度を導入している企業は5.7%で、そのうち30日以上の長期休暇が取れる企業は約3割でした。社費留学の条件(復職後の勤続年数など)は会社ごとに違うため、まず勤務先の制度を確かめましょう。

JASSOの給付型は支援開始までの退職が条件

日本学生支援機構(JASSO)の海外留学支援制度(大学院学位取得型)は返さなくてよい奨学金で、在職中でも応募できますが、支援が始まるときに企業などに雇われていないことが条件です。募集要項の補足Q&Aは、正社員のまま休職する場合や契約社員に変わる場合は退職とみなさないとしています。

一方、退職すると収入がなくなり、雇用保険の基本手当は「いつでも就職できる」状態が前提のため、留学中はその前提に合いません(最終的な判断はハローワーク)。前の年の所得にかかる住民税も出国後に残るため、退職の時期と資金計画をセットで考えましょう。

休職なら教育訓練休暇給付金を使える場合も

2025年10月に始まった雇用保険の教育訓練休暇給付金は、就業規則などに定めた社内制度にもとづいて30日以上連続の無給の休暇を取って学ぶ人に、基本手当に相当する額を出す制度です。厚生労働省は、対象の例に「海外大学院での修士号の取得」を挙げています。

休暇の前に雇用保険の加入期間が5年以上あることなどが条件で、給付日数は加入期間に応じて90〜150日です。1年の修士でも全期間はまかなえず、受給すると被保険者期間がリセットされるため、勤務先の制度とあわせてハローワークで確かめましょう。

理系・文系と国による違い

理系の研究型大学院は、授業や研究の手伝い(TA・RA)で授業料や給与を得られる例がある一方、授業型の修士やMBAは自己資金が中心になりやすいのが特徴です。期間や家族を連れて行けるかも、国と課程で変わります。

研究型と授業型で費用の出どころが違う

英国のQAAによる修士の分け方は、研究が中心の研究型、授業が中心の専門・発展型、職業に向けた専門職型の3つです。マサチューセッツ工科大学(MIT)は、研究助手(RA)や授業助手(TA)の任用で授業料の一部か全額がまかなわれ、給与や健康保険も出ると説明していて、化学工学科は在籍する大学院生全員を全額支援しています。

一方、ニューヨーク州立大学バッファロー校は、修士課程は主に自己資金で、修士向けの助手職などは限られると案内しています。授業型の修士やMBAは、自己資金や奨学金で用意する前提で計画を立てましょう。

イギリスには12か月で修了する課程がある

修士の長さは国や課程で違い、例えばケンブリッジ大学のMBAは12か月の課程です。期間が短いほど、収入が途切れる期間と生活費は少なくて済みます。

一方、2年制の課程では、夏のインターンや在学中の実務研修(アメリカのOPTなど)で実務経験を積みやすい面があります。収入が途切れる期間と、在学中に得たい経験のどちらを重視するかで選びましょう。

家族を連れて行けるかは国と課程で違う

英国では2024年1月以降に始まる課程の場合、家族を連れて行けるのは博士や研究型の上位学位の学生などに限られ、授業型の修士(MBAを含む)では配偶者や子どもを帯同できません。カナダは、配偶者が就労許可を申請できるのが16か月以上の修士課程や博士課程などの学生の配偶者に限られています。

オーストラリアでは、2026年10月2日以降に申請する学生ビザに家族を含められるのは、博士課程の学生や、学費を全額まかなう外国政府奨学金を受ける人などの例外に限られ、修士は授業型・研究型ともに原則として帯同できません。アメリカの学生の家族(F-2)は働けないため、家族と一緒に行きたい人は国だけでなく課程の種類と長さも確かめましょう。

海外大学院の費用と資金の集め方

海外大学院の費用は学校と国で大きく違うため、学校が公表する授業料と生活費の目安で確かめます。社会人が使う奨学金やローンには、年齢・在職・申込人の条件がある点に注意が必要です。

学費と生活費は学校の公表額で確かめる

例えばケンブリッジ大学のMBAは、2027年9月入学の授業料を86,250ポンド、2027/28年の生活費の目安を20,700ポンドと公表しています。英国の学生ビザの申請料558ポンドと、医療付加料(年776ポンド)も別に必要です。

社会人の場合は、学費と生活費に加えて、在学中に収入がなくなる期間と、出国後に残る前の年の所得の分の住民税(国民年金に任意加入するならその保険料も)も見込む必要があります。授業料は課程ごとに違うため、志望校の公式サイトで最新額を確かめましょう。

奨学金は年齢と在職の条件に注意する

社会人が応募を考えやすい給付型の奨学金の年齢条件は、次のとおりです(2026年10月時点)。

奨学金

年齢などの条件

JASSO大学院学位取得型

修士35歳未満・博士40歳未満

中島記念国際交流財団

30歳以下・分野の限定あり

フルブライト奨学金

年齢制限なし

JASSOの大学院学位取得型は、2026年度の実績で英国・アメリカ・カナダが月388,000円など国ごとに月額が決まっていますが、授業料の別途支給はありません。2026年度募集は応募683人に対して採用175人で、TOEFL iBTの新しい尺度で5.0以上(旧尺度で95以上)などの基準もあります。フルブライト奨学金は年齢制限がない一方、留学後に2年間自国に滞在する義務があり、そのままアメリカで就職できない点に注意しましょう。

貸与型奨学金と国の教育ローンの注意点

JASSOの第二種奨学金(海外)は、大学院なら月5万・8万・10万・13万・15万円から選べる利子付きの貸与型です。ただし、進学前の予約採用に申し込めるのは大学などを卒業して2年以内の人などに限られ、社会人の多くは進学後の在学採用になります。在学採用は本人と配偶者の住民税の情報で判定され、修士で配偶者がいなければ給与収入536万円以下が目安で、申込月によって前年か前々年の収入で判定される仕組みです。

日本政策金融公庫の国の教育ローンは、海外留学なら450万円まで借りられます。ただし公庫は、国外に住む予定の人には両親や親族に申込人になってもらうよう求めているため、家族と相談してから資金計画を立てましょう。

働きながらの準備と日本側の手続き

働きながら準備する社会人は、入学の1年半〜2年前から英語試験や学校選びを始めると、奨学金の応募にも間に合いやすくなります。退職して出国する場合は、住民税・年金・健康保険の手続きも出発前に済ませましょう。

入学の1年半〜2年前から準備する

準備は、おおむね次の順に進めます。

  1. 英語試験(MBAならGMATやGRE)の対策
  2. 志望校と課程を選ぶ
  3. 志望理由書と推薦状を用意する
  4. 奨学金に応募する
  5. 出願して合否を待つ
  6. 退職・休職とビザの手続き

推薦状は、職場の上司に頼むこともできます。TOEFL iBTは2026年1月から1〜6の新しい尺度に変わっているため、志望校の要件がどちらの尺度で書かれているかも確かめておきましょう。

奨学金は入学の1年〜1年半前に応募する

フルブライト奨学金の2027年度(2027年秋学期開始)は、オンライン登録が2026年3月1日〜5月1日で、入学の約1年半前に応募が始まりました。JASSOの大学院学位取得型の2027年度募集は2026年9〜10月に応募を受け付け、2027年3月上旬に採否が決まる予定です。

JASSOの次の募集要項は例年9月ごろに公開され、10月上旬に締め切られます。英国の学生ビザは入学の6か月前から申請できるため、奨学金の結果とビザの時期を逆算して予定を組みましょう。

住民税・年金・健康保険の手続き

1年以上海外に住む場合は、市区町村に海外転出届を出し、国民健康保険をやめる手続きをします。国民年金は海外に住むと加入の義務がなくなりますが、日本国籍なら任意加入でき、将来の年金額を増やせるほか、海外にいる間の障害・遺族の年金の対象にもなるのが利点です。

住民税は、その年の1月1日に住んでいた市区町村が前年の所得に課税するため、年の途中で出国してもその年度分を払う必要があります。住民税を払い終えずに出国する人は、出国前に納税管理人を決めておきましょう。3か月以上海外に住む場合は、在外公館への在留届の提出も必要です。

卒業後のキャリアと現地で働くための制度

卒業後に現地で働けるビザや就労許可の長さと条件は国によって違い、2026年は制度の変更も続いています。年収が上がるかどうかは学位の使い方しだいなので、出願前に卒業後の計画を立てておきましょう。

卒業後に働ける制度は国で違う

主な国の卒業後に働ける制度(ビザ・就労許可)は、次のとおりです(2026年10月時点)。

国

卒業後に働ける制度

期間の目安

イギリス

Graduate visa

2027年1月以降の申請は18か月

アメリカ

OPT

12か月、STEMは24か月延長

カナダ

PGWP

修士は3年

オーストラリア

Temporary Graduate visa

授業型の修士は2年

イギリスのGraduate visaは2026年12月31日までの申請なら2年で、博士は3年です。オーストラリアの卒業生ビザは申請時35歳以下が条件で、研究型の修士や博士なら50歳未満まで申請でき、期間も3年になります。カナダのPGWPはカナダ国外からのオンライン受講の期間を長さに数えないため、学ぶ形にも注意しましょう。

年収が上がるかは学位の使い方しだい

厚生労働省の令和7年賃金構造基本統計調査では、学歴別の賃金(月額・男女計)は大学卒が396.3千円、大学院卒が517.4千円でした。ただし、これは国内外の大学院を区別しない平均の差で、大学院に行けば年収が上がるという因果を示すものではありません。

文部科学省の「Global×Innovation人材育成フォーラム」の最終まとめ(2025年)も、留学の障壁の一つに留学の評価についての社会的認知の不足を挙げています。帰国して転職するのか、現地で働くのか、専門職に就くのかを決め、学位をどう生かすかを出願の前から考えておきましょう。社会人の留学で後悔しやすいパターンと防ぎ方は、社会人留学で後悔する5つのパターンでまとめています。

卒業後の就労の制度は変わり続けている

アメリカでは、2026年10月に実務研修(OPT)に手数料を設ける規則案が出されましたが、2026年10月時点で施行はされていません。入国時に認める滞在期間を課程の長さ(1回の入国で最長4年)に固定する規則も2026年9月15日に施行され、課程が4年を超える場合や卒業後にOPTで働く場合は、移民局(USCIS)への滞在延長の申請が必要です。

カナダでは2026年1月から、公立校の修士・博士の学生は州の受入証明が不要になるなど、大学院生を優遇する動きもあります。卒業後の就労の制度は変化が大きいため、出願前と卒業前に、各国の移民当局の公式サイトで最新をご確認ください。

よくある質問

社会人の海外大学院への進学について、よく出る質問への答えをまとめました。

30代・40代でも海外の大学院に行けますか?

行けます。入学に年齢の上限を置かないと明記する大学もあり、アメリカの大学院生は30歳以上が4割を超えています。ただし、JASSOの給付型(修士35歳未満)やオーストラリアの卒業生ビザ(申請時35歳以下)など、年齢が条件になる制度もある点に注意しましょう。

高卒でも海外の大学院に行けますか?

原則として学士の学位が必要です。一部のMBAは長い管理職経験で例外的に検討しますが、学士がない場合は、まず学部で学位を取る道が基本です。条件は各校の募集要項で確かめましょう。

働きながら海外の修士は取れますか?

オンラインの課程なら、働きながら学べるものがあります。ただし、イギリスのGraduate visaやカナダのPGWPは現地での学修が前提で、JASSOの給付型も完全オンラインの課程は対象外です。

まとめ

社会人でも海外の大学院には進め、入学に年齢の上限を置かない大学もあります。ただし学士は原則必要で、JASSOの給付型奨学金は支援開始時に退職していることが条件など、進め方によって使える制度が変わります。費用は学校の公表額で確かめ、卒業後に働ける制度の条件も国ごとに比べましょう。

次にやることは、勤務先の休職・社費留学の制度を確かめ、英語試験の受験計画を立てることです。進学の全体像は海外大学・大学院進学完全ガイドで確認できます。

この記事の出典

本記事の制度・金額は、2026年10月21日時点の各公式サイトの情報です。奨学金・給付・ビザの条件は変わることがあるため、最新は各公式サイトでご確認ください。

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